最終的に金子みすゞにたどり着く。
昔、何かの本で読んだ。
演技のタイプは大きく分けて2種類あり、ひとつは感情派、もうひとつは理知派……と書いてあったと思う。
前者はいわゆるイタコタイプ。役を下ろして演技をする。
後者は冷静な自分を持ったまま、演技をするタイプ。
…という感じの内容だったような気がする。すごいぼんやりだけど。
いつどこで読んだのかも、何という本だったかもまったく覚えていないのだけれど、おそらく演劇を始めた高校生の頃に読んだんじゃないかと思う。
その頃は、イタコタイプに憧れていた。
なんか天才っぽいじゃん。カッコいいじゃん。
まぁでも憧れるってことは、そうじゃあないのである。
私は芝居中に突然ブワッと泣き出したりするので、かなり入り込んでると思われることもあるようなのだが
実際には、その次の瞬間面白いことが起これば普通に笑えてしまうくらいフラットな状態である。
と言うと、嘘泣きなのかと疑われるかもしれないが、それも違う。
ほら、赤ちゃんってビービー泣いてたと思ったら、次の瞬間キャッキャッて笑うときあるでしょ。泣いたカラスがもう笑ったってやつ。あんな感じ。なので、私は実質赤ちゃん。
その瞬間はほんとに悲しかったり悔しかったりつらかったり嬉しかったり、何かしらを感じて泣いてる。
ただ、感情を感じる器官から涙腺までのルートが非常に短いので(短いというかもはや直結してるイメージ)泣き出すまでがとにかく早い。
これは私の欠陥であると同時に武器でもある。いわば諸刃の剣だ。
今はそこまでではないが、若い頃は日常生活でもよく泣いてしまっていた。
泣けば済むと思ってるのか、なんて言われたりもした(思ってねーよ)。
「強い人を演じていれば泣かないでしょ、女優なら普段から演じたら?」と役者をやったことがない人に言われることがある(役者には言われたことないな、そういえば)。
ここまで読んでくれた人はもうおわかりかもしれないけど、私にとって演じることは仮面をかぶることではない。
むしろ、どこまで自分をさらけ出せるかだったりする。
だから、「演技でガードする」という手法は私的にはしっくり来ない。
「だったら普段は心を閉じて傷つかないようにすれば良いのではないか?」と思われるかもしれない。
これも私としては違う。
普段から心を全開放しておいたらおそらく傷つきまくって死んじゃうので、2割くらい閉めておくことは必要かと思う。私のような、豆腐メンタルの人間はとくに。
でもね、普段ガッチガチに閉じてる人が、芝居するときだけ急に心を開けるかと言ったら、それは無い。
そして、その閉じてる状態のまま芝居をすると、なんとなく上っ面になってしまうのだ。技術的な上手い下手とか以前の問題で、なんか嘘っぽくなる。
で、閉じた状態に慣れてしまった人が、また開けるようになるのは簡単じゃないのです。
だから、傷つくのは嫌だけど、芝居が嘘っぽくなるのはもっと嫌なので、私はなるべく開けておくように意識している。
生きてれば岩戸に閉じこもりたくなることもあるけどね…でも、誰も岩戸の前で歌ったり踊ったりしてくんないからね。結局は自力で出るしかないのじゃよ。
だからこう、なんといいますか、心閉じたくない(語彙力どうした)。
まぁだから泣きたくなったら泣いて、ガス抜きしながら生きていこうと思っている。
ストレス溜まってきてるな〜という段階で一人で何らかの手段を用いて泣くことにしたら、人前で涙腺が爆発する頻度は圧倒的に減ったし。
(例:米津玄師さんのLemonを聴きながらルパパトの魁利くんの気持ちを妄想するとしんどくて泣けます)(超余談)
若い頃はストレスが溜まってきてることにも気づけなかったんですな。
自分の心の状態に敏感になると、結果あらゆることに過敏に反応しなくて済むようになるというのはあるのかもしれない。
最終的に何が言いたかったかっていうと
きっと仮面をかぶって芝居するタイプもいるんだろうなと思うし、普段心を閉じてる人もいるんだろうし、演技でガードする人もいるんだろう。
みんなちがって、みんないい。
否定する気は無い。
なので、私にも私なりのスタンスがあることもご理解いただければ尚良いなと思うという話。
今後変わる可能性もあるけど、今はこう思ってる。
ここまで読んでくれてありがとう。また。